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『向日葵の咲かない夏』感想 [小説]


向日葵の咲かない夏 (新潮文庫 み 40-1)

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫 み 40-1)

  • 作者: 道尾 秀介
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/07/29
  • メディア: 文庫



~あらすじ(amazonから引用)~
明日から夏休みという終業式の日、小学校を休んだS君の家に寄った僕は、彼が家の中で首を吊っているのを発見する。慌てて学校に戻り、先生が警察と一緒に駆け付けてみると、なぜか死体は消えていた。「嘘じゃない。確かに見たんだ!」混乱する僕の前に、今度はS君の生まれ変わりと称するモノが現れ、訴えた。―僕は、殺されたんだ。半信半疑のまま、僕と妹・ミカはS君に言われるままに、真相を探る調査を開始した。


~感想~
まず最初に言っておかないといけないことを。

感想書く最初の記事って事でいろんな方の感想観てまわったわけですが、皆様「ネタバレなのであまり言いませんが・・・」と、遠慮しているわけですが・・・このブログではそんなの一切気にしないぜ!!

このブログは「紹介ブログ」ではなくて「感想ブログ」です。

既読の状態で「ほかの人の考えはどうなんだ?」って思った方が参考のひとつとして読んでくれればいいので「思ったことはすべてぶちまける精神」で書いていきます。
・・・バリバリにネタバレでいきます。

うっかり検索サイトでやってきちゃった人の為に重大なネタバレ部分は下のほうに書くようにはしますが・・・

それを理解して読んでくれる方は自己責任でお願いします。





さて、じゃあ感想を書いていこうか。(以下、盛大にネタバレしていくので注意!!














この作品は・・・はっきり言ってダークです。読後感が悪い、悪い。
作者はどんだけ人間に失望してるんだよ!そして、わざわざそれを小説にして読者に売りつけるなんてどれだけ性格がねじれてるんだ?と、思わざるをえないです。

この物語は主人公ミチオの言う「生まれ変わり」が果たして本当に生まれ変わりなのか?という部分の是非で読後感が変わります。作中でもその部分は完全に答えを出していません。

・・・かに見せかけています。

が!!

ある程度の注意を持って読み返せば誰でもわかります。
間違いなく「生まれ変わり」では無いです。

「生まれ変わり」達は決して知られざる事実を口にしません。S君はミチオが調査し得た新たな情報をきっかけに告白をする形を決して崩しません。(たとえばS君は「岩村の犯行だ」と言っておきながらその動機については述べずに、尾行して発覚した事実を元に「それが動機さ」と述べる)

まー、一生懸命理由説明してみたりしましたが
決定的な発言「物語をつくるなら、もっと本気でやらなくちゃ」があって
10章の「本当の終わり」でミチオは全部嘘だったことを告白してもいるんですがね。
この告白部分でも「生まれ変わりに告白する」という形とってるから、うかつに読むと騙されかねないんですよねー。
うーん、タチが悪い。

そんなわけでこの、「生まれ変わり」は「僕は悪くない」を正当化するために捏造した都合のいい真実を信じ込むために主人公が創り上げた「責任転嫁プログラム」なわけです。

ところが、この「生まれ変わりシステム」がさまざまなトラブルに対応するために修正に修正を重ねていった結果、ミチオの心の負荷に限界が生じて破綻してしまう。ってのがこの物語の流れなわけですよ。


「S君の自殺」がトラブルにより自殺で終われなかった為に、自分のせいであることを認めないためにS君の「生まれ変わり」を作成し、得たデータを元に真実を創り上げ、トラブルが起こるたびに真実の修正を行っていった結果、「S君の生まれ変わり」に嘘をつかせることができなくなりこれを削除。

真実の修正に疲労したミチオはすべてをお爺さんの犯行として物語を終わらせ、お爺さんの「生まれ変わり」を作成し、この結果をお爺さんの望んだものとして処理しようとする。

罪に耐え切れなくなりお爺さんの「生まれ変わり」にすべてを告白して死によって物語を自ら破壊しようとする。

ストーリーとしては大体こんな流れです。


・・・そう、ここまでの流れならそこまでの嫌悪感は感じないのですよ。「罪と罰」的なハナシです。

問題なのはこの後!後日談ですよ!!


結局主人公は生き残るのですが・・・



新しく「生まれ変わり」が作成されていました。

しかも「これでよかった」なんて言ってます。



・・・・






何も成長していない・・・。



それどころか罪を認識させたお爺さんの「生まれ変わり」の亡骸に対しての発言が
「あれは、あのままにしておこう。」




・・・・・




・・・・・・・・



まさかの罪とは向き合わない宣言。

しょ・・正気ですか!?




「人間、嫌なこととは向き合わずに生きていけばいい。」
なんて結論にいたる小説ははじめて読みました。




そして読み終わった後にプロローグを読み返すとますますダークです。
本編で小学4年生だったミチオ君はプロローグでは大人になっている(つまりは物語を振り返っている)わけですが

「どこかおかしい。どこか狂っている。」
「僕は、ときおり思う。僕も、生まれてこなければよかったと。」

とか言ってます。

狂っている理由にも気づかずに・・・生誕否定発言です。

・・・なに?これ・・・?




「主人公が全く成長せずに同じ事を繰り返す。」
って終わり方はある意味斬新なのかもしれませんが。


イヤ、物語自体はすごくうまいんですがね。読ませる力、引き込む力がかなりあります。
それだけに・・・読後感が・・・んー・・・
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